決闘!小田代ヶ原


第四話

サイトウ
 

「遠峰くん下がっていなさい。」

 遠峰はショルダーホルスターから拳銃を取り出そうとした。植野山警視はそれを手で制して言った。

「心配は無用だ」

「キェーッ」

 男は植野山警視に向かっていきなり仕掛けてきた。突き、蹴りの連続技を目にも止まらぬ速さで繰り出した。遠峰は植野山警視がボコボコにやられる姿を思い浮べた。

「キェーッ」

 不気味な叫び声を上げ男は攻撃を続ける。

 以外な光景を遠峰は見た。男の正拳突きが植野山警視の胸に決まったように見えた。しかし肉を叩く鈍い音は聞こえて来なかった。

回し蹴りが警視の頭を狙ってきた。警視は避けるふうでもないのに蹴りは空を切った。植野山警視は男の攻撃をことごとくかわしていた。

空気を裂いて迫ってくる男の連続攻撃はことごとくはずれていた。かすりもしない。

「ハア、ハアッ」

 男は息切れしてきたようだ。動揺を隠しきれない様子だった。

「それで終わりかい?」

 植野山警視は涼しい顔で言った。その言葉に誘われるように男は猛然と襲いかかっていった。

うなりを上げて連続回し蹴り、連続突きの攻撃が植野山警視に浴びせられる。男の怒涛のような攻撃を植野山警視はすべてかわしていた。

男は自分の技が何故一つも効かないのか信じられないようだった。攻撃しているはずなのに逆に追い詰められていく。男の攻撃が弱まった。

「ではこっちからいくとするか」

 植野山警視が男に無造作に近寄った。男は少しずつ後退りする。いきなり男は背を見せると茂みの中へ逃げ込んだ。

「待て」

 警視と遠峰は追いかけた。

「この先は崖ですよ」

 遠峰が言った。

「とっつかまえて、正体を吐かせてやる」

 急に視界が開けた。足元は急な崖だった。そのはるか向こうに紅葉の山肌が見える。男は怯む様子もなく崖から飛び降りた。

「あっ!」

 遠峰は下をのぞき込んだ。宙に男の体が落下していった。葉の茂った針葉樹の上に落ちた。そこからまた別な樹に飛び移った。

崖の途中に生えている木々の枝を利用して下に降りていく。難なく下についたようだ。そのまま姿は木々に紛れて見えなくなった。

「畜生、逃げられた」

 警視がうなった。

「猿みたいな奴ですね」

「遠峰君、すぐに連絡して付近の捜査と検問を行なうよう手配してくれ」

「了解しました」

 遠峰は無線で連絡をした。

「遠峰君、大丈夫かね」

 植野山警視がよれよれのハンカチを差し出した。遠峰はそこで初めて自分の額から血が出ているのに気が付いた。血を見たとたん急に痛みが増した。

「痛てて」

「ここに居てもしょうがない、戻ろう」

「ええ」

 植野山警視は熊笹の中を歩きだした。

 遠峰は植野山警視の以外な強さに驚きを隠せなかった。

自分も署である程度の訓練を受けている。全くの素人ではない。倒された警官達にしたってそれは同様だ。

あの長髪の男はそれをいとも簡単に一人で倒した。なのに長髪男は植野山警視に触れることもできなかった。これは一体どういうことなのだろうか。

「叔父さん!」

 光也がやってきた。

「おう、光也か」

 光也は二人の様子をみて表情が曇った。

「叔父さん、逃げちゃった見たいだね。怪しい奴」

「いやー、崖を飛び降りて行きやがった。ランボーみたいに」

 遠峰が言った。

「捕まえなきゃだめじゃないか。せっかく見つけたのにあんなに大勢で追っ掛けたうえ逃げられるなんて」

 光也は不満げだった。

「光也くん。あの男の強さは普通じゃなかったんだよ」

 遠峰が弁解した。

「叔父さんが実力を出さないからだよ」

「えっ?」

 遠峰は聞き返した。光也は犯人が何か落としていかなかったか下を探しながら答えた。

「あの長髪男が強いのはわかったさ。でも叔父さんの悪い癖だね、自分が危険にならないと本気を出さないんだ」

「・・・・・・」

 前を歩いている植野山警視に向かって光也は言った。

「それとも日本刀を持たないと駄目なのかい?」 

「日本刀?」

 遠峰刑事が聞き返す」

「そうさ、叔父さんは本当は・・・・・」

「まあまあ、今仲間が非常線を張っているから何か連絡があるさ」

植野山警視はばつの悪そうな感じで話題を変えた。

「それより、光也。あのサングラス男が怪しいとどうして思ったんだね?」

「それは、あいつが撮影してた場所に戻ってから説明します」

 三人は竜頭滝に戻ってきた。登美子はそこに待っていた。数人の警官が辺りを調べている。登美子が光也を見つけて走り寄ってきた。

「光也、大丈夫だったの?怪しい男は」

「・・・・・・逃げられた。顔面にパンチ食らった中年の警官はどう?」

「手当てのため他のおまわりさんが連れていったわ。なんとか自分で歩いていたから平気じゃないの」

 最初に男が写真を撮っていた場所を光也は指し示した。

「遠峰さんあそこで長髪男は写真を撮っていたんです。正確には撮るふりをしていたわけですが」

 そこにはカメラがついたままの三脚とカメラバッグが置き去りになっていた。光也達はそばに寄っていった。

「遠峰さんこのカメラをよく見て下さい」

 光也の示したカメラはミノルタα505だった。レンズは75〜300ミリF4.5〜5.6ズーム。

 遠峰刑事はカメラをじろじろ見た。

「光也君。別に普通のオートフォーカス一眼レフカメラだけど、一体どこが」

「これですよ」

 レンズの先端に薄いガラス状のものがセットされていた。

「はっ?フィルターですよね。これ」

「そう、それも偏向フィルター。通称PLフィルターって呼ばれてるタイプのものさ」

「それがなんで」

「このフィルターは被写体の表面の反射を低減して奥行や質感をだすのに使用するもので、風景写真を撮る人の使用率は非常に高いんだ。滝や水流を撮るには必須アイテムといえるものかな」

「・・・・・・」

「ただし、これをつけると露出倍数がかかり・・・・・・つまりフィルターで余分な反射をカットするためレンズに入る光が少なくなる。ファインダーが暗くなるんだ」

「で」

「それにレンズだが明るさがF4.5〜5.6とまあ一般的なズームレンズとしては普通の明るさだがファインダーは明るいとはいいがたい」

「・・・・・」

「あの男はしきりに滝を撮っていたがあそこは特に陽が当たらなくて暗い。偏向フィルターを付けたうえ、ただでさえ明るくないズームレンズ。ファインダーはとても見ずらいはず。にもかかわらずあの長髪男は・・・・・・」

「サングラス!」

 遠峰は大きい声を出した。

「そう、あの状況でサングラスを外さないのは不自然だ。夕日とか撮るなら別だけど」

「なるほど」

「それに、あいつ途中でボロだしたよ」

「他にどんな」

「フィルムが撮り終わると自動で巻き戻しされるんだ。あいつそしたら操作がわかんないみたいでそのまま撮るふりしてたのさ。最近のカメラはフィルム取り出すか入れ替えるかしないとシャッター切れなくなるのさ」

「ウーム」

「遠峰さん裏蓋を開けてみて」

 遠峰刑事は手袋をして裏蓋をちょっと操作に手間取りながら開けた。光也の言う通り撮影済のフィルムが出てきた。

「なんて単純な」

「叔父さんだってそばで見てりゃ怪しいってすぐわかったよ」

 遠峰刑事は何回かここを通ったのに全然そんなことに気づかなかった自分を恥じた。

「ちょっとそのフィルム見せて」

「あっ、待て。指紋が付く」

「大丈夫さ」

 ハンカチを使い光也は手に取ってみた。フジクロームプロビアだった。

「リバーサルフィルムか・・・・・・やはり写真好きが関係しているな・・・・・・」

 光也はフィルムを色々調べた。

「これは・・・・」

「光也君どうした」

「いや、ここに」

 そういって光也の見せたフィルムパトローネの胴体部分にはセロテープが貼ってあり、DXコードの自動読取りが出来ないようになっていた。

「こんなとこにテープ貼ってどうするんだ」

 植野山警視が怪訝そうに聞いた。

「バーコードと一緒でフィルムの感度を自動的にカメラが読取り設定出来るんですよ」

「ほう」

「普通の人には便利なんだけど一部マニアには不便なんですよ」

「?」

「たとえばISO感度100でも人によっては好みで感度125に設定したり200に増感したりして使う場合があるんだ」

「??」

「ほら、ナイターとかスポーツ撮るときは暗くてもシャッター速度速くしたいときがあるでしょ」

 光也は説明を続けた。

「カメラが自動で感度を読み取るとその都度感度をマニュアル設定しなきゃいけないからそうならないようにテープでDXコードを隠しているのさ」

「わざわざそんなことする奴いるのかねえ」

「最初からファンクションの切り替えでマニュアル設定できるカメラなら不要だけど、これなら確実だから習慣でしてる人いると思うよ」

 話がわかっているのかいないのか、植野山警視は遠峰刑事に命じた。

「・・・・・・まあいい、これを鑑識に回して調査するよう連絡してくれたまえ」

「はい、わかりました」

 遠峰もあまり理解出来なかったようだ。

 植野山警視は言った。

「光也、ご苦労だった。後はわたしらにまかせて帰りなさい」

「叔父さん、教えてよ。橋本田首相達は明日何時にここ来るの」

「・・・・・・そんなこと教えられるわけないじゃないか」

 警視はそっけなかった。

「けちっ、協力してやってるのに」

 光也は残念そうだった。

「光也は登美子さんとホリディを楽しんどればいいんだよ」

「ちえっ、いいよ勝手にするから」

 遠峰の無線が鳴った。何事か話す。

「警視、車に戻りましょう」

「うむ」

 植野山警視と遠峰は遊歩道の階段を降りていった。

「しょうがない登美ちゃん。俺達もペンションに行こう」

「ええ」

 二人が階段を上がりかけたとき植野山警視の声がした。

「滝から見る日の出は綺麗だろうなあ」

 あわてて光也は振り返ったがもう二人は行ってしまった。光也は何か思いついたようだった。

「ふーん。そういうことか」

「光也なーに?」

「登美ちゃん、明日の時間がだいたいわかったよ」

「本当?」

「ペンション戻ったら教える」

「・・・・・・わかったわ」

 あたりは夕闇が迫ってきていた。  

「光也、夕焼け見損なっちゃったね」

「ああ、写真撮り損なった」

 階段を上る二人を急速に闇は包んでいった。冷たい風が枯葉をサワサワならしていた。

 

 

 

 

 光也はベッドの上で引っ繰り返っていた。

 戦場ヶ原のペンションに着いた頃にはすっかり暗くなっていた。ペンションはログハウス風の白い建物。庭に白樺の木があった。オーナーに挨拶してチェックインする。

 シーズンだけあって忙しそうだった。

オーナーは光也の遠い親戚だったのでこの時期でも予約を取ることができた。未成年の光也達を気づかい部屋も別に用意してあった。きっと光也の母親がうるさく言ったのだろう。

オーナーはけっこう写真好きの人で色々な撮影スポットを教えてもらったりした。夕食はほとんどその話題と光也達の身近な話題で過ぎた。風呂に入った後でパンツ一枚で部屋のベッドにいたのだった。

 唐突にドアが開いた。

「光也起きてる?」

 登美子が入ってこようとした。

「なーにー」

 光也ベッドから起き上がった。

「キャッ」

 登美子はパンツ一枚の光也を見て目を隠した。

「ちょっと待った!

 あわてて光也はスエットシャツを身につけた。

「入っていいよー」

 恐る恐る登美子は中に入ってきた。

「光也、家じゃないんだからちゃんと服着てなさいよ」

「ごめんごめん」

 登美子は風呂に入ってきたらしく、パジャマ姿だった。窓際にあった椅子に座る。

少し開いている窓からの風が彼女の香をほのかに漂わせた。光也は登美子にいままでにない感情が沸き起こるのを感じて妙にドキドキした。自然と目がふくよかな胸のあたりにいってしまう。視線を無理やりそらす。

「光也、竜頭滝であった事だけどさ」

 登美子は髪をかきあげながら話しかけた。

 光也は窓辺の椅子に座った彼女を、どういう風に撮ったら一番美しく撮れるか考えていた。

「ここはやっぱりツァイスのレンズ、プラナーの85ミリF1.4を開放で・・・・・・」

 光也は仮想のファインダーの中でじっと見つめる登美子に向かってシャッターを切った。

「光也何ぶつぶついってんの、私の話聞いてる?」

 はっと我に返った。

「いゃーちょっとね」

「まったく、ぼーっとしてるんだから」

 光也の前の登美子はいつもの表情に戻っていた。

「で、なんだっけ?」

「昼間、竜頭滝で私に教えてくれるって言ってたことよ」

「ああ、あれね。そうあわてるなよ」

 光也はコーヒーの準備を始めた。やっと心が平常心を取り戻した。ドリップしたコーヒーから湯気が立ち昇っていく。

「まあ飲めよ」

「ありがと」

 光也はおもむろに言った。

「明日は天気も良い。予定通り橋本田首相は明日の朝五時には竜頭滝に行く」

「そんなに早く?」

 光也はコーヒーカップをテーブルに置いた。

「間違いない。植野山警視が別れる時に言った朝日が綺麗≠チてのは竜頭滝で見る朝日を指す。中禅寺湖を眼下に滝と紅葉。朝日が中禅寺湖の水面に反射して絶好の情景になる。特に竜頭滝の上側からの眺めはI国大統領に見せるのに絶対だ。橋本田首相のことだ、スケジュールを調整して日の出の時間を見にくる」

「確かに明日も天気は良さそうだから朝日を見にくるってのは考えられるわね」

「そうすれば早朝で一般客も少なく警備もしやすい」

「今日みたいなことがあっては警察の人も必死ね」

「そしてそれからすぐ小田代ヶ原に向かう」

「ふーん」

「そうすれば、小田代の夜明けを見ることも出来る」

「そんな、両方は無理じゃないの。太陽って昇るの早いわよ」

「いや」

 光也はガイドブックの地図を広げた。

「ここは俺達の止まっているペンションの辺り。そしてここが竜頭滝。下側からではなく上流側から滝と日の出を眺めそのまま車で柳沢林道に向かうと。ほら、小田代原」

「車なら近いけど通行止よ、ここ」

「それは一般車の場合。VIPなら無条件で入れるよ」

「それなら早いけど」

「小田代は山陰から太陽がでるから例の白樺に陽があたり始めるまでに充分間に合うさ」

「でも小田代原はその時間帯はすごい人出よ、きっと」

「うん、叔父さん達も何か対策を考えていると思う」

 登美子は立ち上がると窓を開けた。空を見上げた。

「わあー、部屋の窓からでもこんなによく星が見えるわ」

「明日の首相の行動は予定通りってとこだな」

「光也もこっちきて見たら」

「どれ」

 光也は登美子の開けた窓から空を見上げた。冷気が顔を包む。

星が想像していたよりもはるかに多く輝いていた。光也の知らない星座の名前を次々に登美子は言い始めた。

窓から見える夜空の範囲は限られているのによくこんなに名前を知っているなと光也は感心した。

「登美ちゃんずいぶんよく星が見えるんだね。俺だってよく見えないのもあるってのに」

 登美子はにっこりして言った。

「コンタクト変えたのよ」

「コンタクトレンズ?」

「そうよ、今までのやつ合わなくなってて、せっかく日光に行くのならよく見えないとつまらないと思って」

「へー」

「でね。今度はすごく良く見えるの。星も良く見えるし見えすぎる位よ」

 登美子は急に光也の方を向いた。じっと光也の顔をのぞきこむ。真面目顔で言った。

「だって光也がすごく素敵に見えるんですもの」

「えっ!おっ俺・・・・・!」

 光也は狼狽した。

「なにうろたえてんのよ、冗談よ」 

 登美子は笑いながら言った。

「びっくりさせんなよ」       

 光也は間近で見つめられてあせった。  

「あー寒、窓閉めるわよ」

 登美子は窓を閉めた。

「じゃ明日早いから私寝るわ」

「登美ちゃん、もしかして明日俺といっしょにいくつもり?」

「ええ、もちろん」

 登美子はその気になっていた。

「おい、登美ちゃんは危ないからあとから来いよ」

「何いってるの、私だっていざっていうとき頼りになるのよ」

「今日みたいな変な奴だっていて危険だ」

 光也は反対した。

「平気よ。それにA国大統領ってちょっとハリソンフォードっぽくて良い男じゃない、そばで見たいなーって感じ」

「後からペンションのオーナーに送ってもらって来いよ、連絡するから」

「嫌よ」

 登美子はテーブルの上に置いてあった、車のキーを素早くつかんだ。

「あっ、こらっ!」

「絶対一緒に行くの!」

「しょうがねーな」

「置いてったらただじゃ済まないわよ」

 光也は登美子の剣幕に気後れした。

「わかったよ。連れてけばいいんだろ」

 登美子はにっこりした。手に持った車のキーをヒラヒラさせて言った。

「これは念の為預かっておくわ」

「・・・・・・どうぞ」

「おやすみー」

 ドアが閉まった。部屋は急に静かになった。

 光也はベッドに引っ繰り返った。

「登美子のやつなんなんだ一体」

 光也は一人で悪態をついた。

「確か星を見てロマンチックな気分になってたはずなのに、どうしてこうなるんだ。まったくあいつの性格ときたら・・・・・・あーあ」

 光也は今日一日の出来事を朝から順番に思い返していた。

小田代に着いて、写真の勝負に巻き込まれ、植野山警視に会って、そこいらじゅう写真の撮れそうなとこ見て、竜頭滝で不審な男の乱闘騒ぎ・・・・・・。何だかすごくいろんなことが起きて光也の頭は混乱していた。

「寝よう。明日は早いし」

 起き上がり窓のカーテンを閉めようとした。曇った窓ガラス越しに星が見えた。

「星・・・・・・コンタクトを変えたら良く見える、か」

 光也は竜頭滝に残された不審な男の持っていたカメラを思い出していた。

「確かファインダーに視度調整レンズが付けてあった。そうなら犯人は普段メガネをしていないが目の悪い奴・・・・・・あのカンフー野郎がコンタクトレンズしていたとはとうてい考えられないしな。カメラの持ち主は近視」

 光也は部屋の中を独り言をいいながらうろうろした。

「・・・・・・まてよ近視用じゃなくて遠視用だとしたらどうなる。犯人は近視じゃなくて老眼。けっこう年配ってことになる・・・・・・でもカメラが盗難されたものだとしたらこの考えは全然的外れになってしまうし・・・・・・明日植野山警視に確認しよう」

 光也はベッドにもぐり込んだ。

「地元の地理に詳しい奴がメンバーに加わっている。それも風景写真好きの人物だ」 

 明日の橋本田首相の一般に公表されているスケジュールを光也は思い出した。

今晩は日光市内のホテルに宿泊し明日は東照宮、輪王寺、二荒山神社等を見学することになっていた。しかし一般連絡無しで極秘に夜明けの奥日光竜頭滝、小田代原を見にくる。

 今日から明日にかけての東照宮近辺はすごい警備だろう。

植野山警視達のあの警備ぶりを考えても、ある程度多人数の組織が橋本田首相達を狙っているのは間違いなかった。

「まてよ・・・・・・今日の騒ぎで竜頭滝見学のスケジュールを変更する可能性もあるか。うーむ」

 光也は考え込んだ。そして止めた。

「やーめた。寝よ」

 部屋の明かりは消えた。

つづく

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