ロシア圏、旧ソビエトカメラ編
ロシアカメラ、アンティークカメラ購入のさいの参考としてください。これは故障や不良と間違いやすいですが「ロシアカメラとはそういうものである、だからこそ面白い」ということをご理解いただきたいと思います。
光線モレなどトラブルを経験して「もうやめよう」と思うのも「よし次はこう工夫してやってみよう」とチャレンジされるのもあなた次第です。
ご自分にて調整などを試される方はくれぐれも自己責任にて慎重に行ってください。破損されても保証できませんのでよろしくお願いします。
ハーフサイズプリントの仕上がりが悪い
チャイカやアガート、フェドミクロンなどのハーフサイズカメラで
撮影し、あがってきたプリントを見たらピントは悪いし色も良くない。
しっかり撮影したはずなのにきれいに撮れない。
カメラが壊れているの?それともハーフサイズってこんなもの?
と疑問をお持ちになった方は多いのではないでしょうか。
原因はプリントしたDPE店にある場合が多いです。
フィルム性能の向上した現在ハーフサイズからのプリントの質はとても高いです。
しかしハーフサイズのプリントに不慣れなアルバイト店員しかいない店では
ピントの悪いプリントができてしまいます。
チェック方法はプリントを見て画面のどこにもピントが無い場合は疑ってください。
さらにルーペでフィルムの粒子をチェックしてください。
粒子がはっきりしているピンボケは撮影時またはカメラ側の原因と考えられますが
粒子がぼやけている場合は引伸ばしの際の設定ミスが原因です。
ネガをルーペで見てチェックされるとより確実です。
できれば数店現像に出して一番良い店を利用しましょう。
120ブローニーフィルム使用中判カメラの光線かぶり
モスクワ2、4、5などのフォールディングカメラやルビテルなどの二眼レフは裏ブタにフィルム枚数確認の
窓がついています。ここには光をあまり通さないように赤フィルターがついていますがフィルム感度の低かった当時と
違い現在のフィルムではここに強い光があたると光線かぶりが発生します。
裏紙だけでは完全に遮光しきれません。油断は禁物です。
屋外で使用する場合は裏ブタの確認窓を閉じてケースやバッグにいれて携帯してください。
フィルム巻上げもできるだけ日陰を利用して行い巻上げ後窓を閉じてください。
快晴時の屋外や高感度フィルム使用時はより注意を払ってください。
全体的な遮光性能も現代のカメラとは比較にならないくらい弱いです。取り扱いも
注意が必要となります。
生産から数十年(30年〜70年以上)を経過したクラシックカメラを
晴天下で現代の一眼レフと同じような扱いをして光線漏れが発生したとしても
それをカメラのせいにするのはあまりにかわいそうというものです。
クラシックカメラの味わいを引き出すには使用者にも
それなりの知識と操作方法が要求されることを忘れないようにしましょう。
Fed-1型にレンズをつけると無限遠が出ない、距離計がずれる
同じLマウントでも戦前の初期型FEDにはフランジバック(マウントから
フィルム面までの距離)が異なっているものがあります。
(ゴールドライカコピーなども含む)そのまま他のレンズをつけると
距離表示が不正確となったり距離計の無限が行き過ぎたりします。
対策としてはマウント部分に金属板などを加工してスペーサーを自作し、
フランジバックをLマウントと同じにすることにより使用可能になります。
ただしノギスやデプスゲージなどの測定器具も必要です。
距離計がずれる。距離目盛がいいかげん
これはロシアカメラでは珍しいことではありません。
最新鋭のレンジファインダー機であるヘキサーRFやベッサRが初期ロットで
距離計ずれを起こしていたことはみなさんも記憶に新しいと思います。
それほど距離計はデリケートでコストのかかる部分です。
ソ連崩壊後のFED5型などは最初から横方向、縦方向とも少しずれている固体が多くみうけられます。
また、生産が
30〜50年前のカメラの場合、距離計は調整しても次第に狂ってきます。
振動や衝撃、温度などの変化にも弱いです。
(そのかわりといっては何ですが調整も簡単にできるように考えられています
除くKIEV系)
レンズはLマウント互換とはいってもライカ社内の基準で統一されていたものとは異なり精度にばらつきがあり、
レンズ交換すると距離計がずれたりします。
この場合は望遠側のレンズで距離計が合うように調整します。
ジュピター12などの広角レンズでの無限での多少のズレはあまり気になさらない
ほうが精神衛生上よろしいと思います。
またロシアレンズは距離指標がいいかげんな場合があります。3メートルで
3メートルを正確には表示しません。(それでも距離目盛のない最近の安いAFレンズ
よりはよほどまともな気もしますが・・・)
コンパクトカメラでも同様の場合があります。目安程度に考えましょう。
ボディマウント部分にはフランジバック調整のためのスペーサーが使用されています。
またレンズ内にもスペーサーが使用されているものがありこれらのなかには距離表示が不正確となったり
無限大が行き過ぎるオーバーインフ状態となっているものもありますが故障ではありません。
(仕様と思っていただけると良いのではないでしょうか)
KIEVに交換レンズが取り付けできない
KIEVのバヨネットマウントは共通でありながら製作年代等により
個体差があり取り付けできなかったり、取り付けたらはずれなくなったり
します。無理に取り付けますとボディに傷がつく場合が
あります。
また取り付いてもスムーズにヘリコイドが回らないなどの症状が出る場合があります。
同年代であればほぼ取り付けは可能ですが完全互換とはいい難いようです。
こればかりはボディとの現物合わせをしてみるより確かめようがありません。
慎重に取り付けテストを行ってください。
ニコンFマウント対応レンズは完全互換なのか
ニコンFマウント用は概ね取り付け可能ですが一部カメラでは支障が出る例が報告されています。
ニコンFA、F301、F501、F4などAi−Sの連動ピンがマウントにあるものはレンズ側にピンが
ひっかかりはずれなくなる恐れがあるようです。事前に充分テストしてください。
どうしても手持ちのニコンボディに取り付けたいが不安という場合はM42マウントアダプターを
使用するという方法もあります。(無限はでません)
フィルムを入れようと思ったらスプールが抜けない。
バルナックタイプのカメラではスプールを抜き取らないとフィルム装填が
出来ません。普通は指先でひっぱるだけで抜き取り可能ですが、硬くて
抜けない場合がまれにあります。
この場合はペンチなどの工具の出番となりますが
力をかけるときにこじったりひねったりせずに垂直方向に慎重に引いて
下さい。無理な力がかかると巻き上げギア系に損傷を与えてしまいます。
またペンチの先端にはキズ防止のためウエスなどを巻きましょう。
そのまま差し込むとまた抜けなくなるので潤滑油をごく少量綿棒などにつけて塗布
しましょう(付けすぎるとトラブルの原因となります)
巻き取りスプールが無い
オークション等の個人売買であこがれのロシアカメラを購入した。
さてフィルムを入れようとしたらなんか変だ、巻き取り軸がない?
KIEV、ゾルキー1型〜4型、FED 1型〜3型は巻き取りスプールが
取り外し式になっていて、付属していない場合があります。
なるべく購入前に確認したほうが良いでしょう。
(トラブルを事前に避けたいならばこの質問に答えられない販売者から
購入してはいけません、)
KIEVの場合は巻き取りスプールが無くても、もともとダブルマガジン方式
(パトローネからパトローネに直接巻き取る)のため
普通のフィルムの軸で代用が可能です。
巻き始めが少し不便ですが。
ゾルキーとFEDの場合は円柱状のパイプなどを加工して自作する必要があるので
ちょっと面倒です。
追記
個人輸入やオークション購入した付属のスプールはそのカメラに適合していないものが
付属している場合があります。空回りする、フィルムが緩む、位置がずれるなど
はスプールが合っていない可能性もあります。
フィルムがうまく入らない
裏ブタの無いバルナックタイプの場合は
テレフォンカード等を利用してフィルムを入れるのが一般的ですが、
ロシア製の場合はフィルムをカットする正統法で入れることを
お勧めします。
フィルム圧版のバネが強いなどの理由で名刺やテレカではうまく装填できない場合があります。
フィルムを装填したら巻き上げたときに巻き戻しノブが動いているか
どうかを確認しましょう。ノブが動いていない場合は正しくフィルムが
装填されていないか、フィルム切れを起こしている可能性があります。
なおフィルムカウンターのセットは忘れずに。
コピーライカモデルなどでまれに見られる症状ですが、
フィルム先端カットしてもフィルムが入らない場合やフィルムの給装が不自然に重い、巻き上げるとパーフォレーションから破れる
などの症状がでた場合はフィルム厚板が上下逆に取り付けてある可能性もあります。こうなると修理が必要です。
追記
一部初期のFED1ではパトローネ自体が入らないものがあります。これは現代のパトローネと当時のマガジンなどのわずかな差に
よるものです。内部の干渉する部分を少し削ると引っかからずにスムーズに
入るようになります。ライカコピー機にもまれにありますがたまにボディの変形で
パトローネやフィルムが入らないこともあります。
キエフのフィルム装填も初めての方には少々難しい場合があります。純正ではなく
ただのフィルム軸の巻き取りスプールが付属している場合があります。この場合フィルム
の先端をハサミでカットするかセロテープで軸に仮止めすると簡単です。
巻き取り時にはセロテープで止めたことを忘れないようにご注意ください。故障の
原因となります。
巻き上げが重い
ゾルキーやフェドなどのノブ巻上げは本家のライカに比べると
巻き上げはやや固めです。まれに滑らかな個体もありますが
たいていはごりごりした感覚です。またレバータイプも巻き始めが重かったり
巻き上げ角度が大きかったりします。
キエフの場合巻き上げの途中から重くなります。これは低速シャッターが
チャージされるためで重くなってもそのまま巻き上げます。また、巻き終わりの感覚がはっきりしないものも多いのでフィルムを入れる前にまき終わりの
感じをつかむようにしましょう。
キエフは24枚撮りフィルムが標準?
初期のキエフなどでは24枚撮り以上を入れると巻き戻しができなくなったりする場合があります。
36枚でも問題ないかどうかは撮影前にテストフィルムなどでチェックすることをお勧めします。
追記
キエフはフィルム巻取り方法がフェドゾルキーなどのライカ系と違い順巻きとなっています。
そのためフィルム装填がうまくいっていないと巻き太り現象が出て途中で
巻き上げできなくなる場合が
あります。これが36枚取りフィルム不良の原因のひとつとなっているようです。
フィルムが切れる
フィルムカウンターの設定を忘れて規定枚数以上撮ろうとした場合などに
起こします。機種によりますがスプロケットの歯が鋭角になっている、
巻き終わりの感覚がはっきりしない、またフィルムが正しく装填されていない
などによりパーフォレーション部分から破けてしまうのです。
こうなるとダークバッグの出番になってしまいますので注意しましょう。
巻き戻しボタンが無い
ロシアカメラの特徴?として巻き戻しボタン非常にがわかりづらくなっています。
シャッターロックのような位置にあったり、キエフ4AMのように裏フタの開閉キーが
巻き戻し解除を兼ねている機種もあります。
レニングラードは中心のネジを緩めないとまき戻しできません。
また巻き戻しの間中押していないとだめな機種もありますので、
フィルムを切らないように巻き戻しボタンをしっかり押してください。
追記
スメナ1〜7には巻き戻し機能がもともとありません。機種ごとの特徴を事前に調べましょう。
光線洩れしているようだ
ロシアカメラの場合これは避けて通れない問題です。
(避けて通りたいかたはレンズの使用だけにしてボディには深入りしないことをお勧めます)
これは古いカメラの宿命といえます。またロシアカメラは組み付け精度の関係か
光線洩れを起こしやすいのも事実です。
新品当時から光線もれを起こしているものもあります。
撮影時以外はなるべくケースやバッグに入れる、
フィルム巻き上げ、巻き戻しはレンズキャップをする。遮光材を裏蓋部分に
貼り付ける。などでかなり改善、防止されます。
絞りばね、ピントリングが異様に硬い
オイルやグリスが固まっているためです。長年使われてなくて動きの渋いものは
使っているうちにある程度動くようになります。ただし工作精度の関係で
最初から硬い場合もあります。
グリスが完全に劣化している場合は分解してグリスアップし直す必要があります。
応急対策としてオイルをつけるという方法がありますが塗布量や塗布部分など
難しいのでお勧めしません。レンズ部分に流れ出したりすると厄介です。
(行う場合はごく少量をつまようじなどを使い必要最小限の部分にのみつけるようにします。)
レンズを取付けたところ距離表示が真上にこない
スクリューマウントの宿命です。多少のずれはライカとライカレンズの
組み合わせでも多く見られます。
ロシアレンズの場合はそのずれが大きく
距離指標が90度近く横になってしまう場合もあります。少し使いずらいですが、
実際の写りへの影響はまずありません。
冬になったらカメラの調子が悪い
春〜秋にかけて順調に動いていたのに冬になったらシャッターの動きが
おかしい。出来上がった写真を見たら片側だけ白くなってしまった。
シャッターを切ったのに閉じるまでに時間がかかる、速度も変。
これらは寒さによってシャッターが正常に作動していないために起こります。
オイル、グリスの硬化、ゴム引きシャッター膜の硬化など
によりテンションが狂ってしまったためです。
いかに北国ロシア製といえどもオールドカメラなので寒さには弱いようです。
これは気温が暖かくなれば自然と戻る場合もありますが、
シャッターのテンション調整やオイル塗布などの作業が必要な場合もあります。
一年を通してベストコンディションの状態を保つには完全
オーバーホールが必要な場合もあるので、使用時期を限定するなどの割り切りも必要となります。
独特の匂いがする
ロシアカメラは独特の匂いがします。
初めての方は「この匂いは何?」と感じるかも知れません。
主な原因は皮ケースです。皮をなめすのに何か独自の手法が
あるのかわかりませんがなんか変な匂いです。
日本の湿度や気候の関係で余計気になるのかもしれませんが皮ケースは馴染めない
匂いを持っています。
この皮ケースにずっと入れて保管されていたために匂いがカメラに
染み付いているのです。
対応法ですが
ケースとカメラは別々に保管しましょう。
なるべく乾燥した通気性の良いところにおきます。
しばらくすると匂いが自然と弱くなってきます。
これはケースに入れたまま保管するよりカビ防止策としても有効です。
またその他の理由として西側諸国とは接着剤、樹脂、グリス、油など違うものを使っているようでこれらも独特の匂いの原因の一つとなっています。
この匂いの特性を活かせば目隠ししていてもロシアカメラを言い当てる、
というまるでソムリエのようなことも可能です。(冗談・・・)
テスト撮影は必ず行いましょう
カメラやレンズを購入するとすぐに撮影にいきたくなる気持ちはわかりますがテスト撮影は必ず行ってください。
これはロシアものにかぎらず国産中古でも新品のカメラでも同様です。
また大切な撮影ではサブ機(予備)を必ず併用してください。
通常では問題なくても快晴時の海や山では光線モレの危険も高いですし、
調子よく動いていてもなんの前触れもなく突然壊れてしまう場合もあります。
特に取り直しのきかない撮影では押さえ用としてのサブ機の併用は必須条件です。
もっともロシアものに慣れてくるとあえて思い出深い一枚を撮るために結婚式で使ったり、ロシアカメラ1台だけで撮影し「この緊張感がたまらない」と病みつきに
なってしまうひともいるようです。
ジュピター12の適合性
ジュピター12は後玉の大きさが特徴の35mmF2.8広角レンズです。
取り付けできない機種もありますので取り付けの際には十分ご注意ください。
取り付け不可機種
Lマウント
ライカM5、CL、ベッサR系では内部に干渉します。
コンタックスマウント
戦後のコンタックスUa、Vaには干渉します。
なんとなく写りがピリッとしない、フレアが出ている
レンズ前にフードをつけたしレンズ面もきれいなのになんかモヤッとしている。
そんなときはボディ内面反射の可能性があります。
コンパクトタイプのカメラのように最初から内面反射防止処理がよくない場合や
内部黒塗装のはがれなどにより内面反射防止能力が下がっていますとフレアが出やすくなります。反射防止方法としてフェルトやパーマセル、つや消し黒塗料、墨などを
内部に塗るとフレアの減少できます。フレアカッターなどを自作して取り付けるなどに
より本来のレンズの性能を引き出すことができます。
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